2011年9月16日金曜日

分数ができないのは当然 後編

前編では分数の割り算について話しましたが、今度はもう少し他の分数について話します。分数ができないのは当然、常識なのです。

前回は分数の割り算でしたが、今回は小数を分数に直す話から。
0.5=1/2とか、0.33333…=1/3は誰しもがわかりますね。0.375=3/8とかだとパッとわかる人が少し減るかも知れません。
で、これも同じ水準の問題ですが、
3.142857142857142857…(以下、無限に142857が続く)
という小数を、分数で表すとどうなるでしょうか?

小数を分数に直すのは小中学生でやる内容ですから、これぐらい、誰でも出来るはずですが、さて、手こずらず、直ちに手順を思いつけますか?

142857が6桁ですから、1000000をかけると、3142857.14285714...となりますね。これからもとの数を引けば3142857.14285714...-3.142857...=3142857-3=3142854です。小数点以下を全て消してしまうわけです。これは、もとの数に1000000をかけたものからもとの数を引いたものですから、もとの数の999999倍です。ですから、もとの数は
3142854/999999です。ホラ、分数で表せました。

参考までに、既約分数にするとこれは22/7、古代に円周率の近似に使われたとされる分数になります。別にとんでもない分数を持ってきたわけではありません。

カンのいい人や経験を積んでいる人は、142857を見た瞬間に1/7を連想したと思いますが、このようにシステマティックに小数を分数に変換できる人がどれだけいるでしょうか。

繁分数になるともうお手上げという人は多いはずです。5/(4/9)は、普通の分数で表すといくらでしょうか?小学生で出来るべき計算ですが、繁分数という単語が中学生まで出てこないでしょうから、一応中学生レベルとしておきましょうか。

これが45/4とわからないような人があまりにも多い。これが出来るだけで算数や数学が出来ると言われることがあるのが気味悪い。マスコミが「分数ができない大学生」を掲げ、それに同調する人が多くても、実際この程度の分数の計算が出来るだけで算数や数学が得意と思われるようなのはおかしな話です。

枕草子が清少納言の作と知らないとわらわれる世の中ですが、この程度の分数の計算ができなくても当たり前と思われる世の中。理系離れなんていうレベルではなく、世の人はここまで理系の知識が衰えているのかと、世に出回る「理系」の啓蒙書・一般書を読むたびに思います。水・金・地・火・木・土・天・海と同じレベルのことなのに、わかる方が常識以上の知識を持っていると思われる、それがおかしい。

色々な人と話すたびに思いますが、世の中の理系知識に関する教養程度は、文系知識に関する教養程度と比して、数段低いと思います。そんなレベルの世の中が、どうして分数ができない大学生を批判できるでしょうか。

<ついでに>
理科系大学生でも分数ができない人がいます。部分分数展開や虚数を分母に持つ分数のa+bi形への変換などです。が、これを叩くマスコミはついぞ聞いたことがありません。分数を使わない文系大学生が分数の割り算をできないことより、積分計算が必要な理系大学生が部分分数展開をできないことのほうが、よほど問題だと思うのですが。

8 件のコメント:

つきみそう さんのコメント...

先生とつきみそうと達哉んが旅の途中お腹が空いて死にそうになり、道ばたに落ちていた6Pチーズを拾って仲良くわけて食べたところ、先生はお腹を壊して動けなくなりました。つきみそうと達哉んは先生を残して旅を続け、またも空腹で倒れそうになったときに再び6Pチーズを広い、仲良くわけて食べました。さて、達哉んはいくつチーズを食べましたか?・・・と、厳密性を欠く部分があるので専門家には叱られますが、中学3年の授業でこの話をして1/3+1/2の計算を教えます。通分がわからなかった生徒の半分くらいはこれで理解できるようですが、さて実際に通分して計算できるようになるかどうかは別の問題です。
 わかる、できるようになる、○をもらえる答が書けるようになる、という3段階で、最後が一番難しく高い壁です。
 分数の出来ない大学生、と批判めいた記事を書いている人は、分数ぐらいしか出来ないんでしょう、きっと。ひょっとしたら自分も分数の計算を間違えるような人かもしれませんね。

達哉ん/Tatuyan さんのコメント...

>つきみそう 様
ありがとうございます。
そうですね、理解して、出来るようになって、答案になるという段階があると思います。なのに、手法だけ覚えて出来るような気になってしまい、理解することをおろそかにしてしまうこともあるのだと思います。

私に身近な例ですが、Fourier展開を何度話しても忘れてしまう人がいます。そのまま思い出せず、導くこともできないんですね。これは「展開とは元の関数を分かりやすい関数列の無限和で表すことである」「この展開に、波として分かりやすいsin,cosを用いたのがFourier展開である」「sin,cosは適当なスケールで正規直交系をなすので、Fourier係数は内積で決定できる」という考えを理解しておけば苦もなく導出できます。なのに、理解していないから出せない。結果、数式丸暗記という大変なことになってしまうのではないかと思います。

Volcanologue さんのコメント...

私も分数が出来ないうちに入るのだろうか(笑),コンピュータを触りすぎると奴らは分数という概念を持っていないので,生活の中から分数が消えてしまいました.おおかた世間も,生活の中で分数を使わないので出来ないのかなぁと思います.読み書き算盤といいますが,算盤で出来ない計算は必要とされないのかなぁなどとも思います.logなんて言い出したら泡を吹く大衆が多いのも,算盤で計算できないからではないでしょうか.算盤は順序数を扱う機械なので,私は大衆にそれ以外の数を教えないプログラムの方が問題かなと考えています.
後,Fourier級数展開は余り理系でも使わないんじゃないでしょうか.寧ろFourier変換の方をちゃんと判るようにすべきでしょう.

達哉ん/Tatuyan さんのコメント...

>Volcanologue様
ありがとうございます。
「算盤でできない計算は必要とされない」というのはなかなか興味深い意見ですね。実際、分数というのを覚えていない人は多いようで、今、自分の友人に、真分数・帯分数・仮分数と言っても意外とパッと思いつかないようです。

Fourier展開つかいませんか?乱流解析や、あるいは音声に関わる部分を扱うときにスペクトル解析しますから、その原理の理解に必要だと思うのですが…。ちなみにその友人、Fourier変換もできません。

匿名 さんのコメント...

世界中の人が閲覧できるブログで、友人の悪口を載せるのは、止めた方が良いと思いますよ。

達哉ん/Tatuyan さんのコメント...

>匿名の方
ご忠告ありがとうございます。
あんまり悪口という感じで書いたわけではなかったので、見落としていました。

Volcanologue さんのコメント...

貴君にとっては,悪口というより頭の痛くなる問題なのでしょう.
尤も,貴君の書き方には少し問題があって「任意の直交関数系に展開すること」がFourier展開なのであって,別に sin, cos はよく使うけれど,他でもよいのですよ.
Radonは勉強しましたか? 量子重力を扱ってもいいし,CT scanでもいいが.

達哉ん/Tatuyan さんのコメント...

>Volcanologue さん
ありがとうございます。
実際にはたしかに「頭の痛くなる問題」ですね。悪口という気ではありません。
Radon展開は聞いたことありますが、やったことがなく、また必要もないため、まだ勉強していません。別の方ばかりです。
私の持っている本では、直交関数系のうち三角級数を使う物を特にFourier展開と呼んでいて、他の直交関数計、例えばチェビシェフの多項式だとチェビシェフ展開と書いていますが、どうでしょう?ただし私は、Fourier級数展開の級数を抜いてFourier展開と言っているので、意味が違うのかも知れませんが…。