2011年6月30日木曜日

書評:居酒屋(エミール・ゾラ)

今回の書評はエミール・ゾラ著「居酒屋」
です。これは、文学の授業で読むということで購入して読んだものです。

アマゾンのレビューにも書いてありましたが、読んでいて気持ちのいい作品ではないというのが正直なところです。学術的に、あるいは社会的にみれば価値は高いものですが、小説として人に勧められるものかというと、正直なところすすめられません。

ある洗濯女が男にふられて、その後別の男と結婚して、幸せに暮らした…そこで終わっていれば、私は特別な作品としてではなく、一つの読書歴としてこの本をおいておけたことでしょう。ですが、その後から始まる、後半全体の堕落の物語。そして、それに出てくる周囲の人の、性悪説賛成と言わんばかりの醜悪な書かれぶりは大変に疲れるものでした。これを訳した古賀氏は「現在の日本も一皮剥けば…」と書いていますが、このような近所付き合いがない日本では、少し違う形になるのではないかと思います。

人が人のことを気にせずに生きている現代は、さみしい時代だと思います。いろいろな人を目にしているのに結局出会っていない時代だと思います。しかしながら、逆にここまで性悪な人ばかりが揃っている周囲であれば、私は付き合いたくないと思います。

今、自分の周囲にいる人はこんな性悪ではないから、私はこの居酒屋の人のように、苦しい死に様を体験せずに住むと感じました。そしてもうひとつ、酒の飲み過ぎはやはり人間を狂わせるとも感じました。

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