2010年9月11日土曜日

「誰も書かなかった中島みゆき論」ベスト200を聞いてみよう その5

21~30位です。HPをみるかんじ、23位が抜けているように思います。

粉雪は忘れ薬:21位。粉雪を忘れ薬に忘れてしまいたい、という思い。「忘れるための無理はどこかに隙がある」は人間の忘却というメカニズムの限界を表しているように思えます。忘れたいと思う嫌なこと、意識したくないと思うつらいことを容易に忘れることができるなら私は辛い思いをしていないはずです。別に人より記憶力に優れているわけでもありませんが、それでも忘れたくて忘れられないことは私を苦しめます。粉雪がそれを忘れさせてくれればどんなにか楽でしょうか。…些細なことほど効き目が悪く、些細なことほど心を苦しめる。粉雪に忘れさせて欲しい「優しい日々」や「楽しい人」。私の解釈は一般とは違うかもしれませんが、私にとっては、その懐かしさに今の辛さを対比させてしまい、返って辛くなるから、忘れさせて欲しいのではないだろうかとそう感じます。

WITH:24位。WITHの後に綴りたい「君の名」、「寂しさと虚しさと疑いとの代わりに」。寂しさも虚しさも疑心も、どれも我々が日常にいだいてしまうもの。私であれば書いてある順によく抱くのですが、そのかわりに人、「君の名」を綴ることが出来るだけで、一日長らえる気がします。多くの友人にたまに話してやってくれと言わんばかりに書く手紙やメール。その思いは、WITH、この曲のサビが代弁してくれているように思うのです。

地上の星:28位。中島みゆきが好きだと友人の前で言うと必ず出てきます。父は「親父世代の歌」と言っていて、私も中島みゆきさんの歌の中で格別に、というほどの思い入れはありません。この曲とプロジェクトXという番組の中身がよくマッチしているところこそこの曲のテーマであり、プロジェクトXなくしてこの曲を語っても意味が無いように感じました。プロジェクトXのように芸能人のような派手な人ではなく、いろいろな努力に焦点を当てた曲ですが、他の曲に比べて焦点の当て方を抑えて、ある意味「ぼかして」いるように感じます。タクシードライバーのような直接的な表現に対し、暗喩的な表現が逆にプロジェクトXとマッチしたのではないでしょうか。

2010年9月10日金曜日

万年筆布教論5 「インクの選び方」

初心者とマニアではインクの選び方で着目すべき観点が違います。その点について記していきます。
--以下本文--
万年筆が決定した後はインク選びである。出来ればコンバーターとインク壺で買ってもらうのが長期の使用には(コストパフォーマンスを考えても)良い。毎日使うことが最良のメンテナンスであるというのは言い古されており、また事実であるが、たとえこれを布教者がしつこくいったところで、毎日使ってくれる保証は一切ない。むしろ、マニアであればわかるだろうが、毎日使うことは(数本であっても)意外と難しいのである。
となれば、初心者にそれを強要することはできない。であれば、インクの質を考えて選ばねばならない。無論、ペンと同じ会社のものを選ぶのが最も安全であるが、初心者には出来れば色で選んでほしいというのが私の意見である。特に、使うペンであれば黒か青かを勧めたいところだが、人によってよく使う色は変わる。私が布教した人にも、赤が普段使いという人がいる。このように、色は人によって違うので、まずは相手の欲しい色を聞くことからインク選びが始まる。
色の一手でインクを選んでしまうのはひとつの手で、それに値段も考慮すればよいのであるが、万年筆布教の観点からは、できれば継続使用の可能なものを選ぶべきである。マニアはインクを色々変えたりして楽しむ人もいようし、インク自体を色々と購入するのもまた楽しみ、ご当地インクもいいだろう。だが、一本目の人がインクを次々に変えて楽しもうと思うだろうか?これから長いパートナーとしての一本を選ぶという心持ちだろうから、インクを次々に変えるというのは考えにくい。そこに布教者の介入余地がある。インクの安定供給性である。
相手の状況(例えば引越しをしやすい職業にある、など)を考えて、安定供給可能なインクを選ばなければ、相手はインクを変えることになってしまう。そして、インクを変えるなどマニアにとってはキチンと洗って変えれば、と造作も無いことであるが、初心者にはそこがハードルとなる。それ故、インクを購入するときの安定性は重要である。
詰まりにくいインクをすすめるのも重要であるが、それに加えての安定供給性、となると選択肢は限られてくる。相手が自ら安定して購入できる状況にあるインクの中で、出来れば詰まりにくいものを選ぶべきだろう。万年筆と同じ会社で希望の色があれば万々歳であるが、そうでなければ後述のアフターサポートの充実により対応せねばなるまい。
とりあえず、「期間限定」と名がつくものは論外である。モンブランのシーズングリーティングなどその典型である。インクの良し悪しを論ずる以前の問題で、使い続けることができない。マニアは良いが、初心者にそれは相応しくない。「ご当地インク」については、例えば居住地が近かったり、ご当地インクを売っている店の周辺に定期的に訪れるなどの理由があれば勧めてもよいが、そうでないならば避けるべきである。安全圏として、パイロット、セーラー、プラチナ、ペリカン、モンブランあたりが良いだろう。入手の難しいインクはできるだけ避け、小さな文具店でも売ってそうなインクが良い。
このあたりのインクの選び方やペンの選び方によって相手が選んだ物により、この後のアフターサポート(後述)のウェイトが変わってくる。出来ればアフターサポートなく使えたほうが良い。というのは、アフターサポートが充実していても、アフターサポートを受ける側はそれを面倒と感じる場合が多いからだ。パソコンが多少壊れたからと言って逐一アフターサポートを受けているような人はあまり見られない。これは、受け手側が面倒であるというのもひとつの理由であると思う。アフターサポートのウェイトを減らすことはそれだけ布教者側も楽だし、受け手も安心して万年筆を使える。それだけに、ここでインクの入手のしやすさは確保しておいたほうが良いだろう。インクが無くなったときにいちいち布教者側に連絡して売っている店を教えてもらって…では面倒この上なく、結果使わなくなってしまう可能性がある。
私は実用主義であるので、自分のインクも安定供給できるものを中心にしている。相当な行動範囲、コネクションで安定供給可能にしているので、一般的に安定供給できるとは言いがたいが、それでも電話をかけるなりメールを送るなりして後は振りこんでおけば自分の欲しいインクが送られてくるような状況である。これによって、私はインクに悩むことなく万年筆を使用している。そして、色々なインクを楽しむ前段階の初心者には、この状況よりももう少しコアでない状況、店による安定供給を可能にしておくほうが、ハードルが低くなるのである。

2010年9月9日木曜日

夢とスナック

夢を裏切り続け
挙げ句心配ばかり
そんな息子でも
父にはかわいいのだろうか

帰る度
色々と準備して
ちょっと強引と思うけど
何かしてくれる父

スナックへ
今回は連れて行ってくれた
酒の飲めない私
父は本当は一緒に飲みたかっただろうけど・・・

スナックで
父はにこやかに
ママと話していた
その中にふと私のことを聞いた

息子はいつまで経っても
自分の息子であり
子供に見えるものだと
父の言葉はそう聞こえた

もどかしいと思うだろう
息子のやることを
情けないと思うだろう
息子の世間知らずを

父の夢を裏切り
自分の道を行く
世間知らずな息子
親不孝者と言われても仕方ないのに

父は笑っていた
息子のふがいなさを語りながら
それでも息子を愛するように
父は笑顔だった

スナックの中で
父はいった
将来旅行に連れてってくれと
私のできる親孝行だろうか

父を残しての
スナックの去り際
この親不孝な私を
父はどう思ったろう

酒も飲めないのに
白髪に悩む息子を
父は滑稽と思ったろうか
スナックからの早帰り・・・

アルコールは無理でも
父の横にいることが
もしかしたら親孝行かもしれない
酒席が苦手で飲めない息子でも・・・

どんな息子が良かったろう
今の私はそれとどう違う
父にしか分からないそこに
夢を裏切った自分がいる

はじめてのスナックを去り
帰路につく中で
一つの言葉だけが反芻していた
夢を裏切った息子

2010年9月8日水曜日

万年筆布教論4 「購入するペンの選び方」

偶数日連載の「布教論」の続きです。本ブログでは草稿段階での発表で、一通り書き終えたらWAGNER発表を考えています。疑問等あればコメントください、最終段階に生きてくるので…。
--以下本文--
前項において、購入以前にペンを渡し、それを題材に興味を持ってもらい、一本目の購入機会を見つけるにいたるまでを記した。ここでは購入すべきペンはどのようなペンか、ということを述べていく。
一つに、中古を敬遠すべきでないという意見を掲げる。これは、比較的安価に良質なペンを入手できるためである。中古が新品に対して劣っているという考えは、万年筆に関して言うならば捨てるべきである。無論、中古で状態の悪いペンが存在することは明らかであるが、布教者が正確な眼力を持ってそれらのペンを選ばないよう忠告することで中古のペンでも状態の良いペンを選ぶことができる。中古のペンは本来ある程度万年筆に慣れたものが自ら楽しむために状態を見て購入するか、あるいは調整等により「何とかしてしまう」ことで使うものであるが、前者については眼力さえあれば問題ないのである。調整環境があるならば、調整可能な程度の状態、と少しハードルが下がるので、より広範にペンを選ぶことができる。
このことを踏まえた上で、対面購入をすすめる。一本目からのネット購入は状態の確認ができないことから勧め難い。信頼できる布教者が状態を確認することによって初めて購入する万年筆が良いものとなるのである。これは、ネット販売を批判するものではなく、ネットでの購入において実物を見た個体差の確認ができないというネット販売そのものが持つ欠点を挙げただけであり、ネット販売自体は安価にペンを入手できる手段として勧められる。布教者が的確な調整を施せる環境にある場合はネット販売も視野に入れてよいが、見た目の違いがあることから、購入者にも一度は実物を見せておいたほうが良い。写真とペンブティックと文具店での見た目の差は素人目にも大きいものだからである。
布教者側が購入に際して提供するのは万年筆個別に関する情報と販売店、及びペン先を見分ける眼力である。それに加えて可能であれば調整環境も提供できればなお良い。これらを提供することで書き味のまずいペンを購入することを防ぐことができよう。一本目の書き味が悪いようでは台無しである。当人がストレスなくかけるペンを選んでもらうことは大切であるが、一本をもらい、初めて購入するという人に書き味の好みを聞いてもまだ比較対象がなくて好み自体がないはずである。したがって、当人の書き味の好みで選ぶマニアではなく、布教者側は「当人がストレスなく書けそうなペン」という観点から状態を見る必要がある。寝かせて書くetc等は書き癖が定まってからの話であるので、最初の段階からスイートスポットを意識する必要はない。よく言えば万人向け、悪く言えば八方美人な書き味が良い。コアなファンが好む柔らかい・硬いといった概念は無視し、とにかくストレスなく書ける状態であることを見極める、それが布教者に求められる点である。
一方購入する当人には、試し書きの方法等の説明をした後、デザインと値段の観点から数本の候補を選んでもらうことをおすすめしたい。その候補について上記のとおりに状態を見極め、後、試し書きをしてもらって「気に入った」ものを買ってもらえばよい。初心者である場合、当人の試し書きの結果はストレスなくかける状態か否か程度の情報しか得られないと心得ておき、その一点に集中して書き味を試させれば良い。どれもストレスなく、という場合の決め手は万年筆マニアとは違い、デザインと値段である。書き味の細かな差異で選ぶことよりも、デザイン・値段など明解な部分から選んでもらい、書き味は「ストレスがないこと」を保証すればそれで十分である。
ニブについてであるが、特殊なニブは必要なく、太字の類も不要である。初心者にとっては舶来のFですら太いと感じられることもあるので、EFもしくはFを旨として「太くないかどうか」で選んでもらえばよい。当人の使用用途によってはMまでが許容されることもあるが、太字を一本目にすすめるのは万年筆を普段から使ってもらうという観点に反する。したがって、基本はFと思っておけばよい。ヌラヌラの書き味は2本目以降であり、1本目はそれなりにスラスラインクが出れば問題ないのである。インクフローが潤沢であるかどうかは確かに万年筆選びのひとつの観点であるが、ニブが細字に限られる状況においてはあまり重要視する必要もなかろう。
マニアの書き味を押し付けるのは無意味である。デザインと値段で選んでもらい、ストレスなく書けること、状態が悪くないことを我々が確かめる。それがひとまず一本目を購入してもらい末永く使ってもらう手段である。

2010年9月7日火曜日

父とのスナック

帰省も終盤、父が私を、行きつけのスナックに連れて行ってくれると言い出しました。私はお酒を嗜みませんから一度は断りましたが、いろいろあって結局行くことになりました。その中で思ったのは「父さん、すまない」ということでした。

私はやはり酒席は苦手で、父が連れていってくれたスナックも父より早く帰ってしまいました。父に悪いなと思いながら・・・。

父の夢を砕いてばかりいる自分。キャッチボールを息子としたくて、でも息子はキャッチボールをしたいと思う人間ではなかった。車が好きで、夜中に私を起こしたこともあったけど、私は今、車への興味はなく、「昔とった杵柄」ぐらいしかない。酒を一緒に飲みたい風にしていたのに息子は飲まない。父の夢という点から見れば、親不孝この上ない息子です。進学した環境や普段の行動で親孝行と周りに評されても、実態は親不孝でしかない。それが父への「すまない」に表れています。

父にしてみれば、頭でっかちで生意気な息子は自分の思う方向に成長したわけでもなく、心配ばかりかけて、困ったものでしょう。親の心子知らずで、あくまで推測にしか過ぎないけれど・・・。

連れていってもらったスナックでジンジャエールを飲みながら、楽しそうに話す父を見て心が痛みました。私は息子として夢を裏切り続けたのだと思うと、余計に申し訳ない気持ちでした。

もう少しお金に余裕ができたら、親孝行の真似事でもしようかと思います。夢を叶えるような親孝行でなくとも、少しぐらい親が喜んでくれればと思います。裏切り続けたどら息子なのだから、せめてそれぐらいはしたいと。

2010年9月6日月曜日

万年筆布教論3「機会を見つける」

万年筆布教論で、万年筆をどのようなタイミングで布教するべきかということについてです。
--以下本文--
万年筆の販売店の選び方がわかったところで、そこに連れていく機会はいつが良いか、というのが本節の主題である。一本の、自分のパートナーを選んでもらうのが販売店での購入であり、万年筆布教論の目指す布教の目標と言っていい。その論理から言うならば、各々がパートナーとして耐えうる一本を選べば、そこで布教は終わりであり、以降、さまざまに万年筆を買うのは同じ愛好家として話しながら手伝えばよいのである。そのことを踏まえ、ここでは、「1本買わせる」にいたるまでを説明する。
まず、万年筆に興味を持ってもらうため、試供品として何かを渡すのが良い。舶来の、学童用練習万年筆やカジュアル万年筆といった類の万年筆、もしくは手持ちで使っていないものや、パイロットやセーラー、プラチナなどで1万円未満の比較的安価なものを何かの折に渡すのが良いだろう。理由なく渡すのは相手にも訝しく思われるだろうし、自分自身も渡しづらい。クリスマス、誕生日等何かの理由をつけて渡すのが良いだろう。私の場合は相手の記念事や世間の記念ごとの他、ある集まりで行ったゲーム大会の賞品として使った。このように、何かにかこつけて万年筆を渡すのがまず始まりである。これにより興味を持ってもらうのである。
この時に渡す万年筆は基本的に最高のものとはならない。人によって書きぐせが違うのだし好みも違うのだから、こちらが勝手に選んだ万年筆が相手にとって最高の一品となることはまずないと言っていいだろう。ここがポイントで、悪くはないが、まだ一つ物足りない、という感覚を大抵の人は受けるはずである。そこで、もっと良いものを欲するときがあり、そここそが万年筆購入の機会である。相手の書きぐせなどを見極めつつ、自分の知りうる限りの情報を用いて、相手に合う一本を目指す。アフターサービスは全て自分を介して可能、と言えるぐらいの知識を以て万年筆をすすめる。その時の相手の状況、自分の知識で最も相手が長く使えそうなものを、相手の希望を出来る限り聞いた上ですすめる。
気を引くための一本目は出会いである。そして、自分で初めて買う一本目は、その出会いの意義をより深く理解するためのものである。一本目は決して釣り餌ではない。万年筆を筆記具として認めてもらい、それを日常に使ってもらおうという気を持ってもらうことが必要である。その上で、さらに上質なものを探してもらえるようなものを渡さねばならない。ラミーのサファリやペリカーノジュニア、あるいはシュナイダーベースキッズやパイロットプレラなどはそれに調度良いペンである。ペンとしての味がありながら、次を見させてくれるペンである。
まず一本を渡し、気長にまち、相手が上質のものを求めたときに、それを勧められる態勢。それこそが万年筆布教の機会を見つける方法であり、布教者は絶対に相手に逆らってはならないのである。教えではなく、協力。そのスタンスで機会を見つけることが布教者にとって重要である。
--以上本文--
少し短い上、主張も少ないですが、実は要点です。ここを逃してしまうと、布教は厳しくなります。

2010年9月5日日曜日

うまい言い方のゆうパック

巷間には多くの宣伝がありますが、ゆうパックの戦略は良く考えられているというふうに、先日ゆうパックを利用していて思いました。

ゆうパックは集荷無料を謳っています。そして、過去のゆうパックの伝票には無料集荷と書いてもいます。その一方で、持ち込み割引があり、コンビニなり郵便局なりに持ち込めば100円割引、となっています。これは「集荷すること」が標準価格であり、持込みの場合は値下げ、とみなした言い方です。

ですが、逆に、持ち込みの時を標準とみなせば集荷は100円高いのです。とすれば、「集荷は有料で、100円になっている」とも言い換えることができます。見方を変えただけ、状況は何も変わっていません。

そう、これは単なる言い回しの違いなのです。これをうまく言うことで「安い」と思わせる、その絶妙な言い方が宣伝の効果なのだと思います。

最近は「100円かかるけど集荷にきてもらう」か「もっていく」か、という選択になりました。物事の本質を見ることはこんなところでも大切です。