2010年9月19日日曜日

「誰も書かなかった中島みゆき論」ベスト200を聞いてみよう その6

31位~40位です。もしかしたら「いかにも」な選び方になっているかもしれませんが・・・。

歌姫:31位。「寂しいなんて口にだしたら誰もみんな疎ましくて逃げ出してゆく、寂しくなんかないと笑えば寂しい荷物方の上でなお重くなる…」これほどまでに「寂しい」という荷物の処理の仕方を端的に表した文章は見たことがありません。なまじっか「寂しい」と言っても、まだ付き合って日の浅いような人であればただ逃げ出してゆくばかりだし、と言って強がってみてもしんどいばかり。古巣に戻って寂しいといえば疎ましがらず逃げ出さない人がいますが、それが私にとっての「歌姫」なのかもしれません。決して歌が上手いという意味ではなく、一緒に話すことで、その人の言葉を(私はお茶ですが)飲み干すことで、少し淋しさがなくなるような、そして自分の今いる場所が明確に見える気がするのです。それが「遠ざかる舟のデッキに立つ自分が見える」ということなのではないでしょうか。

幸福論:35位。「他人の悲しみをそっと喜んでいないか」、かなりぐさっと来た一節です。ふと気づけば、夜、眠れない夜に特に多いですが、ふと他人の悲しみをそっと喜んでいる自分がいます。もし、「幸福量保存則」が成立するならば、エゴを承知で言いますが、他人の悲しみの分だけ自分の幸福が増える可能性がある、と。これと対照的なのがのび太の結婚前夜の名言です。しずかのパパの発言に、「のび太は他人の幸福を喜び他人の不幸を悲しめる人間である」と言うものがあります。これは一件単純そうに見えて、ものすごく難しいことです。能力や運に恵まれない例としてよく出るのび太ですが、それでももっとも人間として素晴らしい部分を体現している。勉強などで優等生と言われることもありますが、私はそんな成績の良い人間よりも、のび太のように馬鹿にされても、人の喜びを喜べて、人の悲しみを悲しめる人間でありたかったのです。その「人」が今はまだ限定されているけれど、その限定が解除される日があれば…そう感じる曲です。

狼になりたい:36位。狼は現在においては「肉食系男子」にでも例えるべきなのかもしれませんが、私はそうというよりむしろ、孤高な、「一匹狼」な気がします。一匹狼で生きて行きたいと思うのに、なんだかんだでしんどくて、今日も酒を煽る自分。しんどいな、って思う中で、本当に孤高に耐えられる一匹狼になりたいという痛切な叫び。それが私の、この歌に対する感情です。酒に溺れてやりきれない現実をどうにかしようとする主人公や「向かいの席のオヤジ」。孤高に耐えられる一匹狼ならば、そんなことをしなくていいのかもしれないけれど…。狼になりたい、孤高に耐えられる…。「人形みたいでもいいよな、笑えるやつはいいよな」っていうのが、「いいことしてやがんのにな…」というのは、人形みたいに「いいこと」をただしているだけで笑っていられるやつはいいよなぁ、と、自分の信念を貫こうとしてどこまでも生きたいと思う自分の弱さよりもよっぽど幸せそうだなぁ、と、そう思っているのではないでしょうか。一匹狼になりたい。孤高に耐えられる一匹狼に。自分の信念を貫き通す人間ならば、それが一番幸せなのかもしれないと感じさせられた作品です。

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